A.民法上は、共同相続人の全員が既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した上、改めて遺産分割協議を行うことは問題ないとされています。
税法上は一般に、当初の分割により共同相続人に帰属した財産を分割のやり直しにより再配分した場合には、配偶者の税額軽減の適用が可能な「分割」には該当しないとされています。その場合、分割のやり直しによる相続人間の財産のやり取りは、贈与に該当するものとされます。ただし、期限内申告書又は期限後申告書を提出した者が、一定の事由により既に確定した相続税額に不足額が生じた場合には、修正申告書を提出することができます。この一定の事由に該当する場合の修正申告は、申告期限後の事実に基づいて行うものですので、延滞税や過少申告加算税は課されません。
例えば、相続税の申告後に被相続人名義の定期預金等が発見された場合に、既存の相続財産については分割の対象とはせずに、新たに発見された定期預金のみ相続人間で分割して相続し、増加した財産につき各相続人がそれぞれ修正申告を行うのであれば、相続税本税の増加分に加え、延滞税が課税されます。もし、既存の相続財産についても分割の対象とし、相続人間でやり取りを行った場合には、当初の取得者からやり直し後の取得者への贈与と認定され、定期預金に係る相続税の課税に加え、贈与税の課税も生じることとなります。なお、法定申告期限から1年以内である場合には、更生の請求が認められる余地があります。